高い気密性能と、高い断熱性能をあわせもった高性能住宅。でもなぜ、気密性能と断熱性能が高くなると、「冬暖かく、夏涼しい」快適な家になるのか、いまいちピンとこない方も多いかもしれません。
そこでこのページでは、普段の生活の中でよく使う身近なものに例えて、高気密・高断熱な住宅にするとなぜ快適な生活を送れるようになるのか、お伝えしたいと思います。
高気密・高断熱で「冬暖かい」ことを例えると…魔法瓶!
住宅の性能でまず重要なのが、冬の暖かさ。なぜ高気密・高断熱だと冬暖かくなるのかは、魔法瓶を思い出してみると分かりやすいのではないでしょうか。
いくら沸騰した熱湯でも、火を止めてヤカンや鍋のまましばらく置いておくと、どんどん冷めていきます。100℃の熱湯を30~40分程度おいておくだけで、半分の50℃まで冷めてしまいます。
このお湯を、熱いまま保温しておくのにつかわれるのが魔法瓶ですね。昔ながらの魔法瓶は少なくなって、今は電気ポットでしょうか。
魔法瓶は内びんと外びんの間を真空状態にして、内部の熱が逃げないように断熱。さらに、ふたをしっかり閉めて密閉することで、外部の空気に触れることなくお湯が保温されます。
※実際にはさらに、輻射熱による影響も考慮し、びんの内側を鏡のようにして熱が反射するような仕組みももっています。
高気密・高断熱の住宅は魔法瓶のように、しっかりとした断熱と気密によって暖められた空気が外へ逃げないようにし、冬でも暖かな環境を保てるようになっています。
高気密・高断熱で「夏涼しい」ことを例えると…クーラーボックス!
冬暖かいことに比べて、夏も涼しいということがピンとこない方が多いようです。高気密・高断熱な住宅がなぜ「夏涼しい」のかは、クーラーボックスを思い出してみると分かりやすいのではないでしょうか。
クーラーボックスも実は、基本的な仕組みは魔法瓶と同じです。プラスチックケースの周囲に断熱材を張り巡らせることで、外部の熱が内部に伝わることを防ぎ、冷たいまま保冷されるようになっています。もちろん、外の空気が中に入らないよう、ふたもしっかりと密閉されます。
アイスやケーキなどの生菓子を購入するときに良く使われる保冷バッグも仕組みは同じ。断熱性のある素材で作られたバッグに、保冷材などを入れることで、冷たい状態を長い時間保てるようにしています。
住宅でも、断熱と気密をしっかりしたものにしておくことで、夏の暑さで熱せられた外壁の影響が家の中まで届かないようにし、クーラーで冷やした空気が外部へ逃げないようにすることができます。
室内換気に気密性能が重要なことは…ストローで考えてみよう!
高気密・高断熱でもう一つ重要なのが、計画換気。「気密性能が高い住宅は息苦しくなる」といったことが、いまだに言われたりもしますが、実は「気密性能が低い方が、正しい換気がされない」のです。
このことは、ストローで考えてみると分かりやすいかもしれません。
ジュースをストローで飲むときのことを考えてみましょう。普通のストローであれば、何も問題なくジュースを吸い上げて飲むことができます。
このとき、ストローにいくつか穴が開いていたとしたらどうでしょうか。実際にやってみたことがある方は少ないかもしれませんが、穴から空気がスース―抜けてジュースが吸いにくくなるかと思います。
このジュースが空気だったと考えてみると、通常のストロー(気密が万全)の場合はしっかりと中の空気を入れ替えることができるのに対して、穴あきストロー(気密がいまいち)の場合は穴から空気を取り入れてしまって、本来吸い込むべきところからはあまり取り込むことができない、という状況になります。
気密性能をしっかりとしておくことで、建築基準法でも定められているしっかりとした正しい計画換気を実施することができるのです。
高気密・高断熱でも熱が全く逃げないわけではありません
ここまで、高性能な住宅を身近なものに置き換えて、なぜ快適な生活につながるのかということをご説明しました。
ここで、もう一つ重要なこと、知っておいていただきたいことがあります。それは、「高性能住宅だからと言って、何もせずとも冬暖かく、夏涼しい、というわけではない」ということです。
例えば魔法瓶では、まずお湯を沸かして熱くします。電気ポットならば、冷たい水を入れてから電気の力でお湯を沸かします。クーラーボックスも、冷たいものを入れるか、保冷材などでボックスの中の空気が冷えた状態にしておくことで、初めて効果を発揮できます。
これは住宅でも同じです。高気密・高断熱の住宅でも、まずは家の中の空気を快適な状態にする必要があります。
高性能住宅は、そうでない住宅に比べて、快適な状態にする(暖房で暖める、クーラーで冷やす)ことが効率的(省エネ)にできたり、その快適な状態を長い時間保つことができる、ということなのです。そして、そういったことができるからこそ、部屋ごとではなく家中を同じように快適な状態で保ち、ヒートショックなどの健康被害も最小限に食い止めることができるのです。
家の性能によって、家族みんなが健康で快適な毎日を過ごせる、ということを少しでもご理解いただけたら幸いです。